梅雨明け日記

天気予報で梅雨が明けたと言い放った瞬間に蝉が鳴き始めた。さては蝉の中にも気象予報士はいるのだろうか。「皆さん、梅雨が明けたので今日から鳴き解禁です。残り少ない生涯を地上で鳴き散らしてやりましょう。花に嵐のたとえもあるさ、さよならだけが人生だ」とでも告げているのだろうか?いや、蝉生か。とかく、蝉が喧しく鳴くのには蝉なりの事情があるのだろう。
同僚の訃報が届いた。熱中症で倒れた際に打った頭の打ち所が悪く、入院後暫くして亡くなったそうだ。生きている同僚達は言う。
「あたし、仕事が毎日辛いんだけど、それでも仕事ができるだけ幸せなんだなって…」
「子供によくよく(熱中症について)注意しないと…」
生きている方の同僚達は、死んだ同僚を教訓や戒めとして、受け入れ難いこの事実を合理化しようと努めていた。私はと言えば人生を儚く思った。
日本橋三越本店の屋上にあるビアガーデンへ。エレベーターガールの浴衣姿は素敵だ…そんな猥談を同僚と交わしながら炎天下の会場へ到着。梅雨明け17時の太陽光線よ。折角のチンカチンカのジョッキも汗をかく。青い空、入道雲、団扇、飛行機雲、日傘、ぬるいビール、浴衣、夕立、夕焼け、黄昏。そんな当然のことが特別に思われた。