心の隙間

「マジ、超、サイコーなんで、マジ、超、来てくださいよ、絶対、約束っすよ」と後輩がうるさいので、彼が主催する倶楽部に同僚と行ってきた。音楽は爆音で鳴り響き、若者は体を揺らしてい、私と同僚は陶酔した若者の海をクロールで進み、陸を探す。そこでビールを飲む。話し声は爆音にかき消されてしまうので、同僚と無言で頷きあいビールを飲む。つまりはこうやって、若者達は夜な夜な倶楽部に繰り出しては体を揺らし、眠れない夜を紛らわし、心の隙間を埋めているのだろうね。同僚に目顔で問いかけると、同僚は黙って頷く。心の隙間とは言い得て妙だな、と私は思う。全ての行動の起こりを「心の隙間を埋めるため」で片付けられそうな気がする。オシャンティな店で食事をするのも心の隙間を埋めるため。チャラい服や靴を買うのも心の隙間を埋めるため。お前を抱いてやるのもお前の心の隙間を埋めるため、的な的な。私はと言えばひたすら酒を飲む。しかし飲むそばから蒸発してしまうため隙間は埋まらない。それでもそれしか方法を知らないため、次から次へと酒を飲んでしまうのだろうか。そんなことを考えながら、爆音と陶酔した若者と紫煙の中を漂っていた。