味噌田楽

鬼平犯科帳は 12巻まで読んだ。24巻まであるらしいから丁度半分か。まだ先はあるのだけれど、終わりがあると思うと読むのが惜しくなるよ。それで他の鬼平ファン同様、私も鬼平に出てくる料理が食べたくて仕方無くなる。作者の池波正太郎は食べ物により季節感を出したかったと言っているのだけれど、これが季節感を通り越して、その描写が大変美味しそうで、読んでいるだけでつばきが出てくる。
ある回で味噌田楽が出てくる。鬼平が見回りの終わりに立ち寄る居酒屋で一杯ひっかけていく。季節は今時分の冬に入るか入らないかの寒い頃で、酒はもちろん燗だ。そこの肴が豆腐田楽で、寒い夜にこれが堪らないわけで、実に旨そうな描写なのだ。私の田舎で田楽と言えばこんにゃくの味噌田楽を指すので、豆腐の田楽は初めて聞いた。是非食べてみたい。子供だった私には、田楽の味なぞ分からなかったのだけれど、今や田楽と聞けば垂涎し、酒も欲しいなと思う程だ。できることなら江戸時代にトリップして、豆腐の田楽で熱燗を一杯やってから、「親父!勘定はここに置いてくぜ!」と粋にいなせに去ってみたいものだ。