俺は遅刻魔

職場の人達から"日田は時間にルーズ"と思われているようなのですが、それは完全に私を誤解しています。と言いますのも、例えば或る日のこと。通勤途中の私の前に、重そうな荷物を持ったおばあさんが階段を前にして往生しているが目に入るのですね。困っている人を前にして見過ごせる人がいましょうか?私は荷物をおばあさんごと背負いましてあらよっと!矢の如く階段を駆け上ります。そんな私におばあさんは「ああはや!世の中捨てたもんじゃないね。有難う。有難う」と何度も礼を述べるのですね。いいのですよ、おばあさん。困った時はお互い様でしょう?と返すと、私は矢の如く会社に向かうのですが、残念なことに始業時間後に到着するのですね。顔を真っ赤にして怒鳴る上司に、そんな細かいことを気にしていてはガールにモテませんよ?と言って退ける私です。
また或る日のこと。通勤途中の私の前に、草履の鼻緒が切れて往生しているガールが目に入るのですね。困っている人を前にして見過ごせる人がいましょうか?私は手早くハンケチを引裂き鼻緒を直して差し上げました。そんな私にガールは「ああはや!なんて素敵な殿方!せめてお名前だけでも…」と住所・氏名・年齢・職業を聞くのですね。なに、名乗るほどの者じゃありませんよ、と返すと、私はまたしても矢の如く会社に向かうのですが、残念なことに始業時間後に到着するのですね。顔を真っ赤にして怒鳴る上司に、そんな細かいことを気にしていては器が知れますよ?と言って退ける私です。
そのようなことが続いたからでしょうか。最近では、やれやれ、今朝もまた困っている人達を救うことになるのだろうな。と思いつつ部屋を飛び出す私です。しかし仕方ありません。困った時はお互い様ですものね。