光の速さで飲んでいる

「どうしたんだい日田さんよ。今夜はちっとも酒がすすんでないじゃないか」
「いやいや飲んでる。飲んでるよ。光の速さで飲んでいるからお前さんには見えないだけだよ。お前さんこそ飲みねえ飲みねえ」
と瓶ビールを差し向けコップに並々注ぐ。全体私はそれほど酒が飲めない。ビールをジョッキ1杯と水割りを2杯も飲めば眠くなる。それに目の前にはコップに並々ある日本酒だ。乾杯するのに時間がかかる。飲んでいないと思われても仕方無い。やはり日本酒は徳利とお猪口じゃないと。
「ぬる燗でよかったかしら」
「うむ」と酌を受け、
「お前さんも」と酌を差す。
「あら、あたいを酔わせてどうするつもり」
と差しつ差されつ夜は更けていく。なんて塩梅じゃないと。コップを持ちながらそんなことを考えていると更に促される。
「おいおい日田さんよ。今夜は本当に酒が進まないな」
「そんなことはない。飲んでる。飲んでるよ。光の速さで飲んでいるからお前さんには見えないだけだよ。まあまあ飲みねえ飲みねえ」
と瓶ビールを差し向けコップに並々注ぐ。全体私はそれほど酒が飲めないのだ。