ゲーセンと俺

ゲームセンターに入る。紫煙の海をクロールで進み、いつもの筐体の前に腰をおろす。一寸画面を眺め、財布からコインを取り出し投入口に落とす。画面が変わる。キャラクターを選ぶ。ファイト。弱パンチ。しゃがみ弱キック。中キック。必殺技。ダウン。弱パンチ。弱パンチ。投げ技。ユーウィン。ユーウィン。ユーウィン。ユールーズ。
いつもの筐体から離れ、煙草に火をつける。煙を吸い込む。煙をはき出す。いつもの筐体の前に腰をおろす。財布からコインを取り出し投入口に落とす。画面が変わる。キャラクターを選ぶ。ファイト。ユーウィン。ユーウィン。ユーウィン。ユールーズ。
いつもの筐体から離れ、煙草に火をつける。煙を吸い込む。辺りを見回す。精気を奪われたような顔をしたサラリーマンや学生が熱心にゲームをプレイしている。何故俺はこんなところにいるんだ。別段こんなところにいたくもないのに。一体俺は何をしているんだ。何をしたいんだ。この感じは何だ。どこに行ったって同じだ。いつもこの感じが付きまとう。煙を吐き出す。ゲームセンターを出る。街灯がぼんやり光っていた。その光が明るかったことだけ、今でもはっきり覚えている。
あの日以来、ゲームセンターには行っていない。