あたしをゲイバーに連れてって

「タイはいいわよー。タイは男の子が安く買えるのよ。しかも可愛い男の子ばかりなの。あんた達も行くならタイがいいわよー。」
知り合いの頼みでゲイバーに来ていた。もののはずみで、あそこ、新宿二丁目は私の庭みたいなものだから、いつでも連れていくよ。言ってしまったのが運の尽き。知り合いをゲイバーに連れて行くことになった。存外、店員の話は楽しく、私もタイへ飛び可愛い男の子を買ってみたいと思う程だった。話は続く…。
「こういう店が好きならあなた(知り合い)、斜向いにあるレズバーに行きなさいよ。あなたならきっと歓迎されるわよー。あなた(私)はここに残ってさー。じきになじみも来るわー。きっと気に入るわー。」それで、このままここにいてはどうも退っ引きならぬ事態になりそうな予感がし、店を出ることにした。
外は濃紺の闇に覆われていた。天の川が見えたらいいな、私はそんなことを考えていた。店員は店の外まで我々を送り届けに出てきてくれていた。店員は唐突に私に近寄り、私のリーゾンデートゥルをぎゅっと握るやいなや「今度は男の子を連れてきてね…」私の耳元でそっとささやいた。
ジーザス!私は天を仰いだ。
知り合いはそんな私の惨状を眺めてニヤニヤと笑っていた。数日後にはきっと知り合い中にこの惨状が知れ渡るだろうなと私は思った。私は天を仰ぎ、天の川が見えたらいいな、と思った。