博士がケーキを作ってきた話

朝っぱらから新入りが「あの、日田さん。ちょっといいですか…?」と話しかけてきたので、さては「いい加減あたしの気持ちに気づいてください!」と告白イベントかな?と思ったがそうではなかった。どうも博士がケーキを作ってきたことを報告したかったようだ。さすが新入りだ、ビジネスの基本はほうれん草だぜの。ところであの博士がケーキを作って持ってきたのだからこれは大事件である。ジャミロクワイうる星やつらを愛すること以外、私生活がすべて謎の博士がケーキを?(ざわ…ざわ…)早速ケーキを見せてもらうことに。私はNHK今日の料理やキューピー3分クッキングで放送されるような、そんなケーキを想像していた。新入りもきっとそうだったと思う。ところが、である。そのケーキはスポンジを重ね、その間に生クリームを挟んだだけのものであった。ほとんどスポンジと言ってよいかと思う。世に名ばかり店長なる者がいるが、それに倣えば名ばかりケーキである。私は「おいしそうですね」と言った。それくらいしか言葉が見つからなかったのだ。しかしそのことで博士は私を食いしん坊だと思ったらしい。私にもケーキをくだすった。もちろん新入りにも。新入りはちょっと困った顔をしていた。私も同じだったと思う。新入りは博士に「それにしてもどうしてケーキなんて作ったんですか?」と聞いた。博士は「今は不景気ですからね。景気が良くなるように!と思いまして」と答え、私と新入りは笑うしかなかった。