雪が降ると

雪が降ると、嬉しい。とでも人に言おうものなら「子供か」と馬鹿にされそうだけれど嬉しいものは嬉しい。嬉しすぎて雪の上を滑ってゆく程で、それでたまに転んだりもするけれど、やはり嬉しい。
雪が降ると、積もったそれで彫刻を作成し、家の庭に展示する母子が街にいた。雪の彫刻はアニメや漫画やディズニーのキャラクターだったりでなかなか精巧に出来ていた。雪が降ると、私はその母子の作るだろう雪の彫刻を期待し嬉しくなった。実際、私の家族などは「もう○○さん家で出来ていたよ」と教えてくれたり、友人間で話題に上ったりした。みんな期待していたのだと思う。そんなちょっとしたことに期待し、嬉しくなったりするというのはそれはそれで幸せだったのだと思う。
雪が降ると、街の人は幸せを思う。でも、そんな母子も旦那のリストラをきっかけに離婚、一家離散し、街で雪の彫刻を見ることも無くなってしまった。雪が降ると、あの母子を思い出す。あの母子は元気だろうか。あの母子のことだからきっと別の地域に越しても、同じように雪の彫刻を作るだろうし、作って欲しい。
雪が降ると、そんなことを思ったりする。