第14話「仕組まれた罠」

本日は飲み会でしたので、抱えている仕事を明日の私に丸投げして、今日の私はよろしく飲みに行くのです。明日の私の狼狽っぷりが目に見えますが、そんなことはお構い無しです。ザマーミヨ明日の俺!
そんで今日は同期達と飲むのです。久しぶりに気兼ねなく飲めそうです。わーいわーい。そりゃあホルホルと浮かれてしまうのも無理はありません。数十分後には鬱のズンドコに落とされるとも知らず、私は浮かれていたのでした。

鬱男を尻目にチャラ男はモテトーク

そんで時間通りに居酒屋に着いたというのに、誰一人席にはいませんでした。みんな忙しいのかな?そう思いつつ私は妄想世界で脳内彼女口説き落としたりしていました。そうこうするうちに、同期達が着いたようです。
「こんばんは、お待たせー」
その華やかな声がするほうに目をやると、なんということでしょう。オダギリジョー風のチャラ男が両隣にアンノンガールを従えているではありませんか!ぎゃあ、来なきゃ良かった!私は気絶しそうになるのを堪え、なんとか「ど、どうも」と気の弱い返事をしたのでした。
「あー、なんか他の奴らは仕事で遅れてくるみたいだから、とりあえず俺たちで練習ってことで飲んでようぜ」
オダギリの提案で私たち4人で先に飲み始めることになりました。まるで合コンです。私はとりあえず生ビールを頼んだのですが、他の3人はカシスグレープやらカンパリソーダとチャラい飲み物ばかり頼むのでした。やはり若い人はカクテルなんてモテそうなお酒ばかり飲むのでしょうか?私だけがビールで私だけがおっさんですか?ぎゃふん。
そんで乾杯したのはいいのですが、向かい側に座るオダギリとB子だけが仲良さそうに話していて、こちら側に座る私とC子は会話することもなくお酒を飲んだり、シーザーサラダを食べたりしていました。ところでこんな時、ガールとどんなことを話せば良いのですか?モテスキルを持たない私は黙るしかありません。隣ではC子が気怠そうにケチャケチャとグラスをかき混ぜておりました。欠落した俺の感性に響くぜ。

逃避せよ、現実世界

しかしやられてばかりの私ではありません。私は右手に持っていた箸を左手に持ち替えて、ゲーム「できるかな?左利き」をプレイするのでありました。これは私が考案したゲームで、利き腕とは逆を使うことでそれに熱中し現実から遠ざかろう、というものなのです。そして私は早速左利きでタコわさびやらフライドポテトにトライするのでありました。しかしなんと左手の使い難いことか。私は何度も獲物を掴み損ないます。そしてB子がそれに気づいて言うのです。
「わあ、hitasanって左利きなの?」
畜生!バレてしまったか!私は泣く泣くゲームの概要を説明しました。するとB子が言うのです。
「hitasaって一人遊びとか好きでしょう?」
畜生!バレてしまったか!実際二人以上で遊ぶことができません。しかしそこは笑って誤魔化しておきました。嗚呼。あと、C子に至っては「狂ってる」とまで言うのです。そこで私は「狂っているのはこの世界と…貴様らのほうだ!」と言いかけて思いとどまりました。いつかC子を月に代わってお仕置きしたいものです。

部屋で枕を濡らします

そんで他の人たちが来ないうちに飲み会はお開きになりました。私と他の三人は帰る方向が違うということで別々に別れましたが、もしかしたら私以外の三人で二次会に行ったかもしれません。しかしそのことは考えないようにしました。哀しくなるだけです。もう哀しいのは嫌なんだ!えーん。私は帰って一人枕を濡らすのでありました。
春の陽気が消え失せ、寒気が戻ってきました。しかし何れは暖かくなることを誰も彼もが承知し、寒くても穏やかに過ごしていることでしょう。ところで私の心にも春の日が差し込む日は来るのでしょうか?誰に聞いても分かりません。明日への不安を募らせて今日も膝を抱えて震えています。震え止めとhotなgirlがneedです。