哀愁のジャズバー

私はショットバーというところはチャラいなあと思いつつも、モテ男とモテ女達のたまり場だという偏見を持っておりましたので、一人で行ってみたいなあと思いつつも敬遠球を投げ続けておりました。そのうちに押し出し失点あわやコールドゲームか?と思われていたところに他社のおっさん達が誘ってくれたのでなんとか逆転のチャンス到来です。
そんでジャズバーです。とは言っても生演奏を聞かせてくれるところではなく、ジャズ喫茶的バーなのでありまして、本棚のようなところにLPがずらっと並んでおり、それをハンター×ハンターに出てくるハンター協会会長のような風貌をしたマスターがずんずんかけていくという仕組みでした。
そんで水割りを飲みながら他社のおっさんの話を聞きました。他社のおっさんは言います、「若いときは女の顔ばかり見てしまうが、あれじゃあ良い女は見つけることはできねえ」と。なにっ!いきなりモテの真理に迫るのか?私は興奮しつつ水割りをウグッと飲み、そして落花生の殻を力強く砕きました。「俺は年を取ってからだんだんと女の尻やら脚を見るようになってきた、するとどうだおめえ、顔はアレでも良い尻の女がいるじゃねえか!尻は顔以上に色があるんだよ。つまり女は顔じゃねえ、尻だ!」と断言し、ドンっ!と拳をテーブルに叩き付けたのでありました。むむ?つまりそれってフェチで、嗜好の問題では?とも思いましたが私は黙っておりました。きっとフェチ=モテとか、私のようなヒモテには理解できない話だったのです。私はとても悲しい気持ちになりました。
「結局、遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって、ヒモテを押しつぶすのだ…」
私は心の奥底でそう呟き、水割りを飲み干したのでした。